Vol.58

新国立劇場バレエ団ファースト・ソリスト/

福田圭吾

「できなくなったことで、新しい発見があって

                                                                楽しい」

雨降る撮影の中、傘を小道具に軽快なステップを踏んでくれた新国立劇場バレエ団ファースト・ソリストの福田圭吾。入団13年後の2019年6月には初の全幕主演『アラジン』に抜擢。2008年の初演時はアラジンの友人役として出演、2011年と2016年の再演時にはランプの精ジーンを踊る。創作の段階から参加していたからこそ、役への理解力は深く、ハマリ役で好評を得た。

 

「バレエを踊っていて良かったなと心から感じた瞬間でした。親戚や先輩、日本全国から友達みんなが観に来てくれました。多くの人たちに支えられていたんだなと実感できて、幸せな時間を共有できたことがとても嬉しかった」

 

~憧れた先輩~

 

 バレエをはじめたのは物心つく前からという。

「母親の矢上久留美がバレエスタジオを経営していたので、2歳半から教室に連れて行かれていたようです。バレエやりたい?と聞かれて『やりたい』と答えたらしいです(笑)。弟の紘也も現在同じバレエ団です」

そのスタジオとは、大阪を本拠地に1983年に設立されたケイ・バレエスタジオで、多くのトップダンサーたちを輩出していることでも知名度が高い。新国立劇場バレエ団ファースト・ソリストの福田自身と、1997年に入団した山本隆之(新国立劇場バレエ団オノラブル・ダンサー)と、福岡雄大(新国立劇場バレエ団プリンシパル)、福田紘也(新国立劇場バレエ団ファースト・アーティスト)など現在も活躍中である。

 

「ケイ・バレエスタジオは、まずバーレッスンをしっかりやるスタイルを取っていて、小学4年生からコンテンポラリークラスを受けはじめました。学生時代はバレエで忙しかったので、部活には入っていなかったですね。バレエを踊ること自体は楽しかったのですが、思春期だった時期ですし、クラスメートに習っていることを言うのは気恥ずかしさがあった。

 特に運動神経が良かったとかはないですね。かけっこは早い方だと思っていたんですが、実際走ってみたらビリだった(笑)。水泳もそんなに早くなかったと思います。

プロのダンサーになろうとはっきり意識したことはなかったかもしれないです。『いつの間にかなっていた』というのが近いかもしれない。授業中はレッスンで疲れてほとんど寝ていたし(笑)、大学進学もあまり考えていなかった。

中学生のころから国内のコンクールに出場するようになって、気づいたら1位を取れるようになってきました。2002年には、ジャクソン国際バレエコンクールでスカラシップ賞をいただき、ドイツ・ミュンヘンのハインツボッスル・バレエアカデミー留学することになりました。ケイ・バレエスタジオからも『行ってこい!』とあたたかく送り出してくれました」

 

~初出場でスカラシップ賞!~

 

 その海外バレエ留学がひとつの転機になったことは間違いない。

「生活費や授業料も免除してもらい、バレエ中心の生活がはじまりました。あるとき、校長先生から『ローザンヌ国際バレエコンクール出てみないか』と言われたときはビックリしました」

 それには理由がある。

「スタジオの師匠からは、僕も(福岡)雄大も、ローザンヌはムリとずっと言われてきました。僕もどうしても出場したいという強い気持ちもなかったんですが、そのミュンヘンの学校からローザンヌまで3時間ぐらいで行ける距離なんです。なので、進めてくれるなら受けてみようかなと。それに、もし出場できるんだったら、フリーバリエーションの課題を師匠の振付で踊りたい、という意欲が出てきました」

 2003年の初出場を決意。そして、見事、プロフェッショナル・スカラシップを受賞!

同年英国バーミンガム・ロイヤル・バレエの研修生として1年間学ぶ。

ちょうど同時期に、福岡雄大は文化庁在外研修員としてチューリッヒ・ジュニアバレエ団に入団し、ケイ・バレエスタジオの教え子たちは、欧州の地でさらに飛躍を遂げる。

 

「2006年に新国立劇場バレエ団に入団したのですが、やはり山本隆之さんの存在が大きかったですね。ケイ・バレエスタジオの発表会で共演させてもらったり、ずっと憧れの先輩であり目標でした。隆之さんは、まず存在感がすごい。ノーブルな品性の中に、男らしさがあって、ダンサーとしても人としても、隆之さんを尊敬するダンサーは多いですね。

 気分が落ち込んだりしたときは、お酒を飲んで翌日にはカラッとしています。できなかったことを悔やんでも仕方ないですし、あまり落ち込まないタイプです。特に、バレエ団に入ってからは、目の前の課題に打ち込まないといけないので、落ち込んでいる暇がない(笑)。

 バレエ団員メンバーがとても充実していて、僕にない長所を持っているダンサーがたくさんいるので、後輩にも『ここってどういうふうに踊っているの?』と聞いたり、周りの意見にも耳を傾けるようにしています。

 

 ダンサーとして変化や成長を感じたできごとは?

「30歳までは勢いだけで乗り越えてきたんですが(笑)、気合いでできたことができなくなってきている。でもそれがかえって、新しい成長につながることに気づきました。

歳を重ねると当然体力面で落ちてくる。それで身体の使い方を変える工夫をする。

そうすると、無駄な力を使わなくてすむ方法が見えてくる。必要以上に力んで踊っていたんだな、と。色々あきらめたことによって、逆に、自分を客観視できるようになった。

自分の踊りを見直せば見直すほど、基礎が大事なことに気づかされます。

できなくなってきたことによって、見直す時間が与えられ、毎日自分の課題が見つかってゆくような感覚。あきらめたことで、新しい発見があって楽しいです」

 

~振付家としても優れた手腕~

 

 近年は振付家としても高い注目を浴び、新国立劇場バレエ団〈DANCE to the Future〉等で作品発表、自身のダンスユニット「DAIFUKU」も2016年から始動し、昭和の家族を描いた2019年の振付作品『HOME』は、好評により東京と大阪の二都市で開催。〈Summer Concert2019〉で発表した新作『accordance』も高評を得て、来る3月の〈DANCE to the Future2020〉で再演が決定、目覚ましい躍進を続いている。

 

「振付家というとちょっとおこがましいんですが、自信になりました。

30歳から振付活動もスタートして、ダンサーと振付を両立しないといけない。どちらも中途半端な仕上がりになって、できなかった言い訳は絶対したくなかった。

特に『HOME』は公演が重ねっていた忙しい時期だったので、2ヶ月前からスタートし、

バレエ団のレッスンが終わってからクリエーションの時間に充てました。出演者が全員まとまってゆっくり振付ができる時間がなかったので、パズルのピースをひとつ一つ創作していきました。一つの作品としてどういう形にまとまるか不安でしたが、納得がいく作品ができたと思います」

 

 猫の姿に扮したユーモア溢れるシーンからスーツ姿でスタイリッシュに踊る場面など、それぞれのダンサーの個性を上手く引き出した振付と演出とで、強く心に残る楽しい舞台となった。バレエを観たことがない人からも、「面白かった」「こういうバレエをもっと観たい」「新国立劇場でも上演してほしい」という声が上がったという。

 

 出演ダンサーたちも、とても楽しかったのではないだろうか?

「彼らからは『いつも振付がギリギリすぎる!』と言われていました(笑)。でも、リハーサルの雰囲気はすごく良くて楽しみながら創作できました。最近、「DAIFUKU」公演が多くの人に認知されてきたので、だんだん責任を感じるようにもなってきました(笑)」

 

 その次の公演、「DAIFUKU Vol.6」『Strong B』が、3月6日(金)から8(日)まで横浜で上演される。今回も、演出・振付・出演を大和雅美とで担う。

「スタイリッシュでクールなバレエエンターテイメントにしたいと思っています。キーワードは、カッコよく!強く!美しく!『Strong B』の「B」は、「Ballet」「Beat」「Body」「Beauty」「Balance」などなど。

オムニバス形式で小さいピースがつながっていくようなイメージを持っています。音楽はオリジナル曲と既存の楽曲で、今回はビートボクサー・HIRONAさんの生ライブもあります。前回よりコンテンポラリーテイストが少し濃くなるかもしれません。

会場のTHE HALL YOKOHAMAは、客席とダンサーとの距離がとても近いのでダンサーの息づかいや温度を間近で体感してほしい。普段見られないようなダンサーの新しい魅力も引き出したいと思っています」

 

 「DAIFUKU」は、今後どうなってゆくのだろう?

「いつも行き当たりばったりで、正直こんなに続くと思ってなかったんですが(笑)、

継続していくことが大切だと思っています。再演を期待する周囲の声も多くなってきているのでプレッシャーを感じつつも、楽しんでやっていきたい」

 

その後も、7月21日(水)には、沖縄の英雄をテーマにした『護佐丸(ごさまる)』を上演。藤間流日本舞踊家の藤間蘭黄と、その娘役に長田佳世が出演、福田圭吾の振付が決定している。

そして11月7日(日)に、日本バレエ協会の「クレアシオン」にて振付家3名(森優貴、松崎えり)とともに、新作を発表。出演は、米沢唯、福岡雄大、木下嘉人など新国立劇場バレエ団ダンサーが出演する。

 

 ダンサーと振付の両立で、これかららますまず忙しくなりそうだ。

「現在34歳になり、今後のことを少し考えるようになりました。振付以外も何がしたいかを40歳ぐらいまでに見つけたいという気持ちもあります。もちろん、ずっとダンスに携わっていくつもりですが、もう少し視野を広げてみようかなと思っています」

●福田圭吾 公式URL

https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/

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