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スターダンサーズ・バレエ団〈Dance Speaks 2024〉振付家・森優貴にインタビュー

 



 スターダンサーズ・バレエ団が9月に開催する〈Dance Speaks 2024〉は3つのプログラムで構成され『『ワルプルギスの夜』(振付:ジョージ・バランシン)『マラサングレ』(振付:カィェターノ・ソト)、そして新作の『Traum ―夢の中の夢―』(振付:森優貴)が初演される。本番が来月に迫る中、新作について森優貴氏がインタビュ-に応じてくれた。


-本作は、エドガー・アラン・ポーの詩「A Dream Within a Dream(夢の又夢)」から着想を得たとのことですが、どのようなストリー性またはテーマが描かれるのでしょうか?


 現実での喪失、鮮明に残っている記憶。それらに囚われながらも「夢」のような、また同時に「現実」のような、曖昧であり、虚構である世界に飲み込まれていく男が存在しています。そんな彼を飲み込み、彼に要求し、傍観し、傷つけ、または彼が失った者、事柄の記憶の断片のように存在する影。


 「夢」の世界が現実なのか?それとも「現実」自体も虚構にまみれた、信じがたい世界なのか?どこに辿り着くのか?辿り着かないのか? 眠り、目覚め、眠り。記憶の断片だけが鮮明に。 言葉にしたくはないですが、あえて言葉にすればそんなイメージ、ストーリーかもしれないですね。


-スターダンサーズ・バレエ団への創作ははじめてになりますね。


 スターダンサーズ・バレエ団ダンサーのように、大きな関心を持ち、課題に真っ直ぐに向き合い、確実に消化していく姿を前に創作できる現場であれば、なお一層直感的な判断を大切にし、音楽に身を任せ、想像し、創造する。あとは、ダンサーたちをリードし、ガイドし、託していける。

 作品ができ、終演し、後に振り返った時に気づく「発見」は大きなものになっているだろうなと思いますし、次の新作に必ず影響されていくものになっていると思います。


-創作への向き合い方について変化はありますか?


 振付家として「動きを表現手段として」舞踊表現と言われる手段で舞台作りをしていますが、自分自身が「より魅力的な、より複雑な、より新鮮な等」の動き、振付というものに対しての探究心というような意識に飽きてきているのが本心です。


-「作品ごとに新しい言語を発見したい」と語っていらっしゃいました。


 これまでに色々な劇場で、様々な国籍のダンサーと、様々な条件の下でたくさんの作品を創ってきました。今の自分自身の「作品ごとに新しい言語を発見したい」という思いは心の奥に持ち続けながら、でもやはり森優貴の言語というのは変わらず出てきますから。それを癖というのか、ルーティーンというのか、個性というのか…。

 それこそ20年前だとしたら、もっと「作品ごとへの新しい言語」への執着も強かったですし、リサーチ、探究心も今よりもありましたよね。それは経験値がないから当然なことです。

 しかし、今は、どうなんでしょう。「作品ごとに新しい言語」と言うのが、「振付」に必要とされる新しい身体言語だけではないのですし、作品を通して新たな身体言語の発見という「一種の力が入った姿勢」が無くなってきてるのも、ある意味いい飽きであり、力が抜けているというか。それ自体が「発見」かもしれないですね。

-「過去・現在・未来、死、喪失、決別、分断、虚構……といったテーマは、常にあるもの」とのことですが、本作ではいかがですか?

 すべてだと自分では思っています。そもそも、すべて切り離せない気もしています。細かく分けれることもできるのでしょうけど、すべてが大きな円の中に収まっている。そんな気がします。


-本作の演出で、特にチャレンジングだと感じている点を教えてください。


 今回に限らず、毎回がチャレンジですし、試行錯誤です。本当に何もないものを、生み出し、形にして、舞台上で存在させるわけですから。目の奥で見えた世界観を忠実に現実化する。音楽が見せてくれた世界観を、生み出された虚構を現実化する。

 それは自分自身にとって常に最大のチャレンジです。作品により、関わるダンサーや、団体により、自分なりの安産、難産の感覚はもちろんありますが、毎回がチャレンジです。


スターダンサーズ・バレエ団〈Dance Speaks 2024〉

2024年9月22日(日) 、23日(月祝) 彩の国さいたま芸術劇場 大ホール

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