○笠井叡 『NOBODY IS HERE』のタイトルに込めた思い
今の時代ほど、自分が自分である、というアイデンティティーが崩壊していく時代はかつてなかった。生物学的な男性・女性のジェンダー的区別も、自分以外の誰も決定してはくれない。自分が生者であるか死者であるかの決定すら、危うくなりかけている。今が現実であるのか、夢の中の世界であるのかも含めて、外側から自分のアイデンティティーを確立してくれるものは、もはや消滅しつつある。
Nobody is hereはその意味で「ここには誰もいない」ではなく、「ここに<誰でもないもの>がいる」としたい。そしてこの「誰でもないもの」とは、自分のカラダに関してのみ、有効なのではなく、カラダを持つすべての人間に対して有効なアイデンティティーであると思う。
夜中、ふと目がさめた瞬間、街角を曲がった瞬間、人の目を見つめた瞬間に「誰でもないもの」に出会う。反対に、非人称的な「それ」とか「これ」とかが、「Body 」を主張しはじめている。
○三東瑠璃 『NOBODY IS HERE』を踊る想い
40代、身体が衰えたり、柔軟性が失われたり、思うように動かなくなっていくお年頃にさしかかり、それでもまだまだ若いと言われる年齢でもあり、人生折り返し地点のような時間でもある。37年間踊りと共に生きてきた人生。
ダンスは、永遠に一緒に生きることができる関係で決して私を裏切らない。
笠井さんとの出会いは必然だが、説明はできない。この機会は、特別だが通過点に過ぎない。いつも本気で向き合うことのできる人と作品に恵まれ、吸い込まれ
るように私はただただひたむきに身体を委ねていくだけ。
終わるまで何もわからないし、終わってもわからないかもしれないけれど、今は、本番を迎えるのが楽しみで仕方ない。
芸劇 dance Co. Ruri Mito
2024新作公演『NOBODY IS HERE』
2024年1月26日 (金) ~28日 (日) 東京芸術劇場シアターイースト
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