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第1回バレエ芸術推進協会・BAJ授賞式イベント報告レポート






2024年3月に一般投票で選ばれた最優秀ダンサーと最優秀振付家賞の第1回バレエ芸術推進協会(BAJ)授賞式イベントが4月13日に都内の会館で行われた。最優秀受賞者からはビデオメッセージが届き、それぞれ受賞金とガラストロフィーが後日贈られた。また、近々新作を上演する振付家の池上直子と平原慎太郎(上記画像右と左)の無料トークイベントも同時に開催された。


〈2023最優秀ダンサー賞受賞・米沢唯〉(新国立劇場バレエ団プリンシパル)

「最優秀ダンサーという言葉はとても恐れ多いのですが、投票によって選んでいただき心の底から感謝の言葉でいっぱいです。2011年のデイビッド・ビントレー監督の『パゴタの王子』の作品ではじめて主演デビューをしたときから(中略)、ただひたすらに目の前の舞台に向かって踊ってきただけですが、あの日のことを思うと、このように選んでいただけたことが夢のようで胸がいっぱいになります。”楽しかった””また観に行きたい”と思っていただけるように全身全霊で舞台に向かいます。本当に有難うございました」


〈2023最優秀振付家賞受賞・金森穣〉(Noism Company Niigata芸術総監督

「この度、最優秀振付家賞を受賞したことをとても嬉しく思います。対象が主に東京バレエ団に振り付けた『かぐや姫』が選ばれたということで、皆さんのコメントを拝見しました。(中略)この作品の可能性やブラッシュアップして世界に羽ばたける作品になるという言葉をいただき、近いうちにまた東京バレエ団で再演されることを望みます。”日本から世界から発信する日本のオリジナルバレエを”という斎藤友佳理芸術監督からオーダーをいただきましたが、私自身、22年前に日本に活動拠点を移してから抱えていた問題でした。日本でバレエといえば、欧米の作品を上演していくことが多い中で、日本独自のオリジナル作品を世界に向けて発信すべきであると以前から思っていたので、皆さんからの支持を得られたのは嬉しく思いますし、世界のバレエ史においてこの作品が一つのポジションを占める作品として、充分手ごたえを感じています。今後も舞踊家として、日本の芸術文化と劇場の発展を願っています」



~振付家・無料トークイベント~ ※抜粋してお届け


司会:松野乃知/バレエダンサー・モデル

〈池上直子〉振付・演出家・ダンサー/Dance Marché主宰

〈平原慎太郎〉振付・演出家・ダンサー/OrganWorks主宰


―では早速ですが、振付家の頭の中を覗いてみたいと思います。創作が生まれるのはどんなときですか?

〈池上〉

自分が観たい作品をつくりたい、というのがまずあります。物語が好きなので、抽象的なものよりは感情移入したり、色々な物語を見て、振付をする映画とか感情を丁寧に紡いで創っていきます。音楽が先ではないですね。心情がどのように変化してゆくかを大事にしています。

〈平原〉

振付をどういうときに考えるかは難しい質問ですね(笑)。全部の作品が呼び水になって、作品を創っているという感じ。連続している中で常に新しいものを創ろうとしていてその過程で決まってくる。何かを観てではなく、過去に創った作品が次を決めている。前回創った作品の反対側を創作するときもあるいつの間にか、次の作品を創ることになっている感覚。


―いきなりですが、今だから言える舞台上の失敗談はありますか?

〈池上〉

自分がダンサーで出演していたとき、映像に合わせてピアニストとの共演で踊っていたんですが、音が出ない(笑)。映像は映っているけど、音が出ないので、ピアニストも私も即興でピンチを乗り越えました。音楽も変わって、自分の表現も違うものになった(笑)。でもあれはあれで緊張感があって良い作品になったと思います。

〈平原〉

洒落にならないアクシデントはたくさんあります(笑)。ゲネプロだと思っていたらその日が本番だったとか(笑)バレエダンサーをしていたとき、本番中に居眠りしていました。槍を持って立っている役だったんですが、ずっと槍が斜めになっていたみたい(笑)。コンタクトというテーマの男性3人組の舞台で何をやられても無敵の役だったんですが、その公演で、足の甲が血まみれになってしまって、終演のとき血まみれで終わった(笑)若い頃、汗に血が染みてたれきて、自分はどんどんテンションが上がるけどお客さんはどんどん引いているみたいな(笑)


平山素子さんの振付作品に出演したときに、舞台上で正座で長い時間待っている演出があって。能楽師の津村禮次郎さんが観に来ていただいたんですがそのあとで「あのときなんにも考えてなかっただろう」と言われて、バレていました(笑)


―おふたりとも新作を控えていますが、作品の構想を教えてください。

〈池上〉

5月に新作『Eden』を上演します。タイムリープを繰り返すストーリーですが、エンディングが先に決まって、そこから遡って創りました。タイムリープをすることによって物語が進んでいく。

〈平原〉

公式発表がありますが、タイトルは「こうていとほうてい」です。当て字です。久々に台本を書きました。「死者になるまでの記憶の話」です。普通、公演タイトルの発表は紙面で見ることが多いですが、こういう耳だけで聴いて、タイトルを想像するってやってみたかった(笑)。


―先に設定があって劇場が決まったのですか?

〈平原〉

何かしようとは思ってました(笑)。今回、客席を3メートル高い位置にしました。客席の視点を変えることに、今興味がありますね。


―良いダンサーの定義は?

〈池上〉

空間を掴めるダンサー。

〈平原)

それ分かります!

〈池上〉

舞台上で空間を掴める人は上手いダンサーが多いですね。テクニックとか、どう踊るという先を見て、作品の中で自分の存在感を出せる人。目線も大事ですね。

〈平原〉

ダンサーのどういうところを見ますか?たとえば、オーディションや公演などではどうですか?

〈池上〉

舞台に立っているとき、空間が使えるか。空間を掴めるか。自分が何をしていないといけないかが分かっているか、でしょうか。

〈平原〉

僕もほぼ同意見です!空間の把握は大事ですね。周りと何をしているのか、目線の動きや距離の測り方とか。

〈平原〉

コンテンポラリーダンサーは、とにかくリサーチをします。たとえば、肘を曲げないように踊ってくださいとか課題を出す。そうすると、正解を求めようとするダンサーと、すぐ飛び込めるダンサーがいる。振付家に「これが正解ですか?」と聞くダンサーがいますが、僕は正解を求めなくていいよと返します。

〈池上〉

私は振付を先に創ってしまうのですが、(私が求めているのと)少し違うなと思ったとき、どこまで完成度を求めますか?または、どこまで誘導します?

〈平原〉

僕は結構誘導します。ストレッチの方法を変えさせるまでやります。身体改造をする人と、しない人がいると思いますが、しない選択をしているのは理由があると僕は思うタイプです。僕の言い方が伝わっていないとき、自分の言い方が刺さらないからだろうなと思ってアプローチを変えますね。


―コンテンポラリーダンサーに必要なことは?

〈平原〉

日本は(公的な)教育機関がないので、底上げをしていくことが必要。身体を平均化させないといけないと思います。でも教育機関がないから、そのプロセスを飛ばしてますよね。それを20代で改めて教えるのはすごく大変なこと。ダンサーのレベルを上げるのは指導者が言い続けるしかない。日本にも良いダンサーはたくさんいるので。

〈池上〉

そうですね。ちゃんと教えてくれる人がいなかったから、身体がある意味できていないダンサーがいると思います。

どこまで教えてあげたらいいのか迷うことがあります。熱量がもっとほしいとかもありますね。コンテンポラリーでもレッスンは必要だしレッスンは自分を見つめる時間だと思います。


―最近のダンサーで気づくことは?

〈池上〉

やはりダンサーのレッスン不足が気になります。もう少し身体にフォーカスするダンサーがいればいいなと思います。リハーサルはするけれど、レッスンしないから基礎がない。コンテンポラリーの基礎を知らないで踊っているのかもしれない。だから私たちの世代がちゃんと教えていかないといけませんね。ダンサーを育てるのも私たちの仕事ですから。

〈平原〉

僕は年に1、2回はクラシックバレエを観に行く。コンテンポラリーダンサーで決まった稽古をしている人は少ないけどバレダンサーエは毎日レッスンしているから。


―コンテンポラリーの教育をしていくにあたって明確なメソッドなどを学ばれたのでしょうか?

〈平原〉

僕はポストモダンのテクニックをたくさん学んだ上でコンテをやると楽しいよ。こうやって崩すんだよなど教わってきました。

〈池上〉

私は(ポスト・モダンダンスの)マース・カニングハムと直接学んできた人に習ってきたのでそれを受け継いできました。


―もっとも影響を受けた人は誰ですか?

〈平原〉

僕の師匠は坂井靭彦(ゆきひこ)さんです。でもダンスのスキルを習ったことはなくてダンサーとしての哲学をを教えてもらいました。

〈池上〉

幼いときに習った先生から、私は「つくるのが好き」なんだなということに気づかされました。特にダンスにこだわっているわけではなくいま私ができるのはダンスと思っています。


―日本を出て海外と比較すると日本はどうですか?

〈池上〉

欧州では劇場文化が市民に根付いていますね。

〈平原〉

スペインでは終演後、終電ぐらいまでみんなで感想を言い合ったりおしゃべりする。まぁ、はじまるのも遅いんだけどね。日本人は正解が好きですね。そして、正しいことを知ることが好き。正解を求めたがるというか、答えを知りたがる。でも、ぴったりした正解はないと思うんです。コンテンポラリーって過去のジャンルを否定しながら肯定。肯定しながら否定するみたいなところがあるじゃないですか?その姿勢がコンテであると思っています。


―さきほど、正解を求める話が出ましたが、じつはクリエイター(業界)も正解に囚われています。その意識をどう外していますか?

〈平原〉

なるべくフィードバックさせますね。言いやすい環境が大事。

〈池上〉

先生と生徒という分け方が好きじゃないので私もなるべくコミュニケーションをとってダンサーと同等の立ち位置をとるようにしています。

〈平原〉

チームビルディングが大事ですよね。ここではどんなことを言ってもオーケーという場をまずつくる日頃から「これが正しい」とは言わない。正解はそれぞれあるということを浸透させるのも大事だと思います。


Dance Marche Dance Performance vol.11​​『Eden』

2024年5月23日(木)渋谷区文化総合センター大和田さくらホール


ダンスカンパニーOrganWorks10周年公演

「光廷 と 崩底 -my telling was nothing‐」

2024年6月14日(金)〜16日(日)世田谷パブリックシアター


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