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清田カレン/東京シティ・バレエ団プリンシパル

「完璧を求めながらも、未完成な自分も
愛す」

2025' . Vol.121

Dancers Web トップインタビュー

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―気がついたらバレエを始めていたということですが、ほかに習い事はされていましたか?

 

 小学4年生頃から、くもん、そろばん、水泳、ボーイスカウト、ピアノ等々色々習っていました。その中でも水泳が大好きでした。はじめたきっかけは学校のプールの授業で泳げなかったので、近所のスクールに通い始めたらハマってしまいました。

 

 でもあるとき母に「このまま続けたら肩幅が大きくなってしまうよ」と言われて、バレエを優先させるなら確かにと思って、じゃぁやめようと(笑)。

 

―すんなり辞められたんですね。

 

 自分でもバレエを続けたい思いの方が強かったんだと思います。

まず心地良さ。音楽に乗れている自分が、いつもの私でない別の自分のようで、その状態から抜け出せない。そういう魅力が大きかった。

 

―20歳のころ米国に1カ月、カナダに約1年バレエ留学されていますが、その前と後で一番変化があった点はなんでしょう?

 

 大胆に踊れるようになりました。周囲と比べて私って動きが小さいと思いました。

みんな動きがアクティブでアクセントの付け方も違う。もっと動きを大きく意識してできるようになりました。

 

―プロのダンサーになる前にほかの職業と迷いはなかったですか?

 

 ありました!高校はバレエ推薦で関西バレエ学校に通っていたんですが、じつは油絵が描きたくて美大に行きたいと考えたこともありました。そのころ怪我が多かったこともあって、絵は身体を動かすこともないし(笑)。

 

 でも、今まで頑張ってきたバレエの経験がなくなると考えたら、絵はダンサーを引退してからでもいい。いつでも自分ではじめられる。でもバレエはその後できるという選択肢はない。バレエはシビアだから、趣味で楽しくは私にはできない。

私の思考はいつもゼロか100なんです。それで、バレエに改めて向き合うことにしました。

私が絵が好きなことを知っていて、バレエの発表会のロゴを担当させてもらったりしているんですよ。

 

―お母様の清田公美さんは奈良のバレエ・エトワールを主宰されていますが、印象に残っているエピソードはありますか?

 

 はじめての舞台でヴァリエーションを踊ることになったときに、出演直前に母から手紙をもらったんです。当然緊張していますし、精神的に張りつめていたんですが、

「カレンらしく踊ったらそれでいいと思います」と書いてあって、自分らしくていいんだと、あたたかい思いに包まれました。

 今もその手紙を大切に持っていて、そのときのことを度々振り返ってあのときのようにあたたかい気持ちで舞台に立ちたいと毎回思っています。

 

―観客として観た舞台で、印象に残っているダンサーはいらっしゃいますか?

 

 中学生のとき、東京まで〈世界バレエフェスティバル〉を観に行きました。

ヤーナ・サレンコの金平糖の精(『くるみ割り人形』)を観たときに、バレエってこういうものなのか!と衝撃を受けました。身体から溢れ出る強さとしなるバネ。脚でここまで表現できるんだ。今でもその情景が目に焼き付いています。

 

―バレエダンサーとしての美学は何ですか?

 

「完璧を求めながらも、未完成な自分も愛す」です。この精神で、どんなことでも乗り越えて来られました。

 

―これまでバレエを辞めたいと思ったことはありますか?

 

 本当に辞めようと悩んだのは22歳の頃です。

カナダから帰国して靭帯を損傷して、完治に半年かかりました。20代は、人生楽しみたいという時期でもあるじゃないですか(笑)。怪我もあって、バレエ以外のことを楽しみたい思いが強くなりました。

 

 その後、22歳のときバレエを辞める予定でこれが最後と思って神戸のコンクールに出場して結果は4位。他の先生に怒られるぐらい出来が良くなかった。

 

 そのコンクールを観に来ていたバレエカンパニーウエストジャパンの瀬島五月さんから知り合いを通して、「オーディションを受けませんか?」と、後日お声がけいただきました。その公演の演出に山本康介さんのお名前もあって、これは本気やらないといけないと緊張しました。

 コール・ドに出させてもらえれば嬉しいと思っていたのが、『ラ・シルフィード』のセンターを踊らせてもらうことになって、やばい!と焦りました(笑)。

 

 五月先生のレッスンがすごかったんです。いちからバレエの基礎を学び直して、自分でも動きが変わったのが分かりました。プロのシビアな世界を見て、全然やり切れていないことが分かって、どれだけ自分が中途半端だったか分かりました。今思えば、五月先生との出会いもとても大きなターニングポイントでしたね。

 

―ほかにもターニングポイントとなった舞台はありますか?

 

 やはり『白鳥の湖』の主演ですね。

2023年11月の広島公演で全幕デビューしました。すべてがはじめてで、白鳥の主役って本当に大変だなって、これはやってみないと分からない(笑)。

 

 リハーサルで爪が3枚剥がれました。シングルキャストだったので毎日リハーサルで、股関節は痛いし、パンシェも毎日練習しないといけない(笑)。

演じるのは人でなくて白鳥なので、どういうこと?という解釈からはじまって、白鳥とはこういうもの、素晴らしい白鳥はこうあるべきなど、越える山が高すぎる。今振り返っても、あれ以上に大変な主役はないのではないかと思います。

 

―その後、東京で2024年にキム・セジュンさんと、2025年は浅田良和さんと再び白鳥で主演されました。

 

 2025年は大阪での公演だったので、やっと自分のホームに帰れる、やっとホームで踊れる!という嬉しい気持ちでいっぱいでした。

 

―浅田さんは2023年8月にプリンシパルとして入団されて、大きな話題になりましたね。

 

 浅田さんのパートナリングには圧倒されました。力を抜いて踊る天才と感じました。

「こうなってしまった場合はこうすれば大丈夫」など、何があっても動じない。理論的に細かく自身を分析している上に、感情面の表現力もとても深いんです。

 

―そして、『生演奏&バレエコンサート』のゲストダンサーとしてオデット役で出演されます。ジークフリード王子は新国立劇場バレエ団の山田悠貴さんですね。

 

 はい、今回はグラン・パ・ド・ドゥを踊らせていただきます。

悠貴さんは気品溢れる人で、誠実で紳士的。絵本の中から出て来たような方で、綺麗に踊らないといけない!と気が引き締まりました(笑)。

 

 今回NHK交響楽団の生演奏で音取りが若干長いシーンがあるのですが、その間まったくブレることなくキープしてくれる。サポートがとても安定していて完璧!すごく盤石なんです。

 

―オディール役は東京バレエ団の秋山瑛さんですね。今回はどのような気持ちでオデットを踊りたいですか?

 

 ただ綺麗にポーズをとるというより、王子との幸せなひと時を余韻に浸りながら踊りたい。ロットバルトに囚われているという苦しい気持ちも一つ一つ表現したいです。

 

―今後の展望や目標をシェアしてもらえますか?

 

 まずは自分のバレエの質を挙げていきたい。トップのレベルに近づいてゆきたい。

東京シティ・バレエ団は海外のダンサーと交流する機会があるので、もっと上を目指したい。最近、ゲストダンサーとして呼んでいただく機会が増えてきたのが嬉しいです。

 色々な経験をしながら舞台の出演数を増やしたい。そして、もっと多くの方にバレエを観ていただきたいと願っています。

A la neige『生演奏&バレエコンサート』
2025年8月31日 (日) 渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール
https://a-la-neige.jimdosite.com/

【清田カレン プロフィール】

3歳よりバレエ・エトワールにて清田公美に師事
9歳より法村友井バレエ学校にて法村牧緒に師事
2012年 Pittsburgh Ballet School 短期留学
2013年 香港Asian Grand Prix 国際コンクール 第一位
​​2014年 全日本バレエコンクール 第一位
2016年 Royal Winnipeg Ballet School 研修留学​​
2019年 Ballet Company West Japan登録ダンサーとして活動
2021年 NBA全国バレエコンクール 第一位
東京新聞全国舞踊コンクール 第一位、同年7月、東京シティバレエ団に入団
2023年4月 ソリストに昇格、12月 プリンシパルに就任。
https://www.tokyocityballet.org/staff/staff_000691.html
 

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