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大川 航矢/牧阿佐美バレヱ団プリンシパル

「とにかく踊り狂いたい!」

2025' . Vol.115 

Dancers Web トップインタビュー

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―お姉さんが通うバレエ教室の送り迎えについていく中で2歳からはじめ、小学校高学年から毎日レッスンに通うようになったそうですが、何かきっかけがあったのでしょうか?

 

 小学5年生のとき、新国立劇場バレエ団の『眠れる森の美女』と、牧阿佐美バレヱ団の『くるみ割り人形』の子役で出演させていただいたことがきっかけだと思います。プロのバレエダンサーを間近で見て、こういう人達になりたいという憧れから、プロのダンサーになりたい意識が芽生え、その頃から本気でバレエを学びたいと思った記憶があります。

 

―15歳のときに単身ロシアに渡りバレエ留学されますが、以前からのご自身の希望だったのでしょうか?

 

 「アナニアシヴィリと仲間達」というガラコンサートのDVDを観てから、ロシアバレエが大好きになったんですが、ロシア留学へのチャンスをいただけたとき、「ぜひ行きたい!」という気持ちでした。

 

― ロシアバレエに深く惹かれたのは理由は何ですか?

 

 そのDVDで、バレエダンサーたちがとても楽しそうに踊っていて、綺麗なのに自由。そして清々しい。その映像で、あるダンサーが床ですべって転ぶハプニングがあるんですが、そのシーンもちゃんと収録されていて、「ここ滑るよ」というリアクションまで入っている(笑)。ユーモアもあっていいなと、いっぺんで好きになりました。

 

―その後、ロシアのバレエ団に在籍されますが、『ラ・フィーユ・マル・ガルデ』のアラン役で出演されたときの質問への受け答えがとても印象的でした。「アランを可哀想だとは思いません。彼は大好きなお気に入りの赤い傘を持っており、それはリーズよりも大切なものだからです」と答えていらっしゃって、役への深い理解に感銘を受けました。

 

 踊りのスキルを追求することはもちろん優先されるので、それに集中していましたが、最近やっと幅が広がってきたと感じます。20代半ば過ぎから身体がコントロールできるようになってきて、次の段階は役を深く理解することに努めたい。自分だったらこう演じたいなという気持ちが沸いてきました。

 ですが、“演じる”ことをあまり意識せず、キャラクターの背景を考えて、この役だったらこういうふうにするだろうなと思いめぐらせ、想像することが好きですね。

 

―2022年9月に牧阿佐美バレヱ団に入団され、現在プリンシパルとして活躍されています。

帰国されて4年目を迎えますが、人生の大きなターニングポイントは?

 

 一番のポイントは、やはりロシアに留学したことですね。日本だと普通科の学校に通って、その後バレエ教室に行くのが一般的ですが、ロシアでは公的なバレエ学校があって10歳から学ぶカリキュラムが確立しています。土台から違うと感じました。そういうシステムがしっかりある国で学ぶことができたことは、すごく大切な時間でした。

 ロシアのバレエ団では、リハーサルがあって本番の舞台がある劇場内での生活が日常でしたが、日本では外部のバレエ講師やゲスト出演の依頼をいただいたり、バレエ団以外で活動の場があることが一番の変化ですね。

 

―指導の先生方から言われた中で、大切にしている言葉はありますか?

 

 「基本を大事にしなさい」ですね。常に基礎に忠実にしたいと心がけています。もちろん個性も大切ですが、バレエの枠からはみだしすぎず、バレエの型の中で自分の色を出していきたいと思っています。

 

―役柄を演じる上で、もっとも印象的となった舞台はありますか?

 

 2023年11月に開催されたバレエ「アレコ」です。宝満直也さんの振付で、今までで一番大きい作品になったなと感じた役でした。青森県立美術館の中心にあるアレコホールはシャガールの絵画が展示されているのですが、生まれ育った地で踊れることもあって感慨深かったです。

 

― どんな点が一番大きかったですか?

 

 肉体的にメンタル的にも、僕にとって挑戦的なバレエでした。それまでは明るい役どころが多かったのですが、バレエ「アレコ」での役はロシア貴族の青年で、そこから逃げ出してジプシーたちに加わる。そこで出会った恋人に裏切られ恋人の男を殺す」というあらすじでした。

 

― そういう重い役柄を演じてみていかがでしたか?

 

 どのように見せれば良いのかを考えて研究しましたが、演出のおかげで、自然に役に入り込めました。だんだんと役に入り込み、これまでにない役を演じることができたのはとても新鮮で、自分でも新たな一面を発見できました。

 

― これまでもっとも満足を得られた舞台はありますか?

 

 難しいですね。技術的にも表現面でも毎回反省点はありますし、でも達成感も少しはないと苦しくなってきますし(笑)。

 

― ご自身で納得があまりいかなかった舞台で、周囲から高く評価された舞台はありますか?

 

 2017年にモスクワ国際バレエコンクール シニア部門に出場したときでしょうか。決戦のとき、ちょっとピルエットがぐらついてしまいダメかもと思っていたので、金賞をいただけるとは思っていなかった。すごくビックリしました(笑)。

 

― これまでバレエを辞めたいと考えたことはありますか?

 

 あまりないですね。小学校低学年のころは部活にはいってみたい。みんなと放課後いっしょに遊びたいと思ったぐらいの小さな悩みです(笑)。とにかく自分にできることを続けていくしかないなと心に決めていました。

 

―ダンサーとしての「美学」はと問われたら?

 

 クラシックバレエの歴史を尊重したいと思っています。新しいことを取り入れながら伝統を引き継ぎ、

先人の方達が守ってきたものを残していけるようにしたいです。

 

―3月8日(土)と9日(日)に上演される〈ダンス・ヴァンドゥ〉で、金森穣さんの振付『Tryptique~1人の青年の成長、その記憶、そして夢』で、大川さんは主演の青年(清瀧千晴さん)のライヴァル役で出演されます。金森さんとの初のリハーサルはいかがでしたか?

 

 昨年の秋ごろに、金森穣さんと2週間ぐらいリハーサルする期間がありましたが、フラットに接してくださって、一瞬でファンになりました!

 譲さんが見せてくれるポーズがとても綺麗で、それを真似て動くことがすごく楽しい。明確なあらすじがある作品ではないのですが、踊りの動きや流れだけでメッセージ性を伝えられるのがすごいなと感じています。もうひとりのライヴァル役・永堀瑠唯くんとの協調性を大事にしながら、踊りで魅せたいと思います。

 

―今後の目標などありましたらシェアしていただけますか?

 

 バレエ団が与えてくれた役を精一杯踊らせていただくこと。バレエダンサーとしての人生は短いですし、たくさん舞台に出たい。とにかく踊り狂いたいです!

 

『Tryptique ~1人の青年の成長、その記憶、そして夢』

振付:金森 穣/音楽:芥川 也寸「弦楽のための三楽章」

 

金森穣の演出ノート

https://jokanamori.com/2024/09/19/410/

 

『ガーシュインズ・ドリーム』

振付:三谷恭三/音楽:ジョージ・ガーシュイン 斉藤恒芳

 

『ホフマン物語』第2幕より幻想の場

振付:ピーター・ダレル/音楽:ジャック・オッフェンバック

 

『グラン・パ・ド・フィアンセ』

振付:ジャック・カーター/音楽:P.I.チャイコフスキー

 

牧阿佐美バレヱ団〈ダンス・ヴァンドゥⅢ〉

2025年3月8日(土)・9日(日)文京シビックホール 大ホール

https://www.ambt.jp/pf-danse-vingt-deux3/

 

【大川航矢プロフィール】
2007年にボリショイバレエ学校に留学、2011年にモスクワ国立舞踊アカデミー(ボリショイ・バレエ学校)首席卒業。ウクライナ国立オデッサ歌劇場、ロシア国立カザン歌劇場、ロシア国立ノヴォシビルスク・オペラ・バレエ劇場ソリストとして所属後、2022年9月に牧阿佐美バレエ団にファースト・ソリストとして入団、2024年6月プリンシパルに昇格。2012年ペルミ国際バレエコンクール 金賞、ベストカップル賞受賞。同年ソチ国際バレエコンクール金賞。2016年ロシア国営テレビKulturaが放映するバレエに順位をつけるショー形式のバレエ番組「ボリショイ・バレエ(ビッグ・バレエ)」に出演。2017年モスクワ国際バレエコンクール シニア部門 男性の部で金賞。同年、文化庁長官表彰を受賞。2018年ロシアのバレエ専門誌が主催する「踊りの魂賞」で若手に贈られる「新星賞」を受賞。
https://www.ambt.jp/staff/ma/koya-okawa/
 

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