Top Interview
秋元康臣/バレエダンサー

「あくまでも基礎に忠実に」
2025' . Vol.118
Dancers Web トップインタビュー

― 3歳ごろからバレエを習い始めたそうですが、ほかにスポーツはされていましたか?
友達とサッカーしたりするのは楽しかったですが、親からも脚の怪我しないようにと言われていて、あえてバスケ部に入りました(笑)。
― 12歳からロシア留学を決めたときから、プロのダンサーになろうという思いはあったのでしょうか?
その当時は、プロがどういうものかも分かっていなかったですが、見たことない世界に、とにかく行ってみたいという好奇心と、習ってみたい、目指したい気持ちが強かった。
バレエ団公演のビデオはよく観ていて、バレエダンサーへの憧れがありました。特に、マラーホフさんが好きで、母と二人で『ジゼル』の舞台を観たときからすごいダンサーだなと思いました。
― 18歳まで6年間、思春期時代を過ごした留学生活で心が折れそうになったときはありましたか?
留学して2カ月間ぐらいは家族に会えない寂しさはありました。でも言葉も分かってきて生活に慣れてきました。ルームシェアが同世代のロシア人の男の子で会話もできるようになって、クラスもフレンドリーな子が多かったです。
― 留学時代で一番記憶に残る出演作品はありますか?
『くるみ割り人形』で、あし笛の子役ではじめて出演させてもらったとき、すごく嬉しかった記憶があります。
― もっとも大きいターニングポイントとなった出演作はありますか?
大きい作品ではないんですが、留学時代のバレエコンサートです。
年に1,2回バレエ学校の発表会があるんですが、それまでは、きっちり上手く踊ろう。ここでバランス取って、何回回って崩れずに降りよう。それを目指して頭が常にいっぱいで緊張している状態でした。
そんなとき学校の卒業公演のときに先生が、「舞台を怖がるな。別に恐れる必要はないんだよ。客席に向けて踊らなくてもいい。ここにいない誰かに向けて踊ってもいい。目に見えている人だけに向けて踊らなくていいんだよ。とにかく楽しんで」。
その言葉をもらってからは、スキルだけに固執せずに楽しめるようになりました。
―これまで数多く出演されていますが、ダンサーとして印象に残る瞬間は?
どんな舞台でも印象に残っていますが、やはりお客さんからいただく拍手や、そのときに生まれる空気感を感じれたときには踊っていて良かったと、心から思えます。
― これまでバレエを辞めようと考えたことはありますか?
苦悩はありますが、辞めたいと思ったことはないですね。
身体が痛い時期が続いているときは、自分の中でモヤモヤが溜まります。やりたくてもできないとき、安静のため動いてはいけないときは辛いですね。
― 東京バレエ団にプリンシパルとして入団されてから約10年間、プレッシャーとはどのように向き合ってこられたのでしょうか?
自分の感じ方考え方次第でプレッシャーは変わるので、自分の中で吸収して課題をやり切ること。重圧はあった方が自分も活き活きできると思います。
― 2024年からフリーで活動されていますが、その決意に至ったのはどのような思いがあったのでしょうか?
思いというよりは、一旦止まって考える時間がほしかったからです。
― フリーになって以降、生活は大きく変わりましたか?
実際にはそれ程変わらないですが、身体のメンテナンスは前より怠らずにやる様にしています。
― バレエダンサーとしての「美学」は何ですかと問われたら?
あくまでもバレエの基礎に忠実に。演じているときでも基礎だけは忘れないで舞台に立つこと。
―6月にバレエミュージカル『カルメン』でエスカミーリョ役で出演されます。以前のインタビューで、「『ドンキ』のエスパーダは今後もずっと覚えていると思います」と語っていらっしゃいました。
東京バレエ団ではじめて出演した全幕がエスパーダだったので印象に残っています。自分には来ないキャラクターだろうと思っていたんですが、踊ってみたら楽しかった!
―今後の展望などをシェアしていただけますか?
バレエを習っている方々、これからの若い人達に教える事もそうですが、演目を挙げるとすれば、『真夏の夜の夢』『海賊』『ジゼル』に『白鳥』、と挙げればきりはありません。ダンサーとしては、踊り切ったという思いは全然なくて、同じ役でも何回でも踊りたいと思っています。
新作バレエミュージカル『カルメン』
2025年6月26日(木) , 27日(金)かめありリリオホール
http://confetti-web.com/@/balletmusicalcarmen
【秋元康臣プロフィール】
3歳よりバレエを始める。2000年12歳でボリショイ・バレエ学校に留学。2006年に18歳で同校を卒業した。 2005年モスクワ国際バレエコンクールでファイナリスト、2006年タンツオリンプ第3位。14年ペルミ国際バレエコンクール"アラベスク"で銀賞を受賞。国内のカンパニーを経て、チェリャビンスク・バレエに入団。プリシパルとして活躍。2015年東京バレエ団にプリンシパルとして入団、2024年からフリーとして活動。令和元年度芸術選奨文部科学大臣新人賞。
https://www.instagram.com/yasuomiakimoto/