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佐々 晴香/ベルリン国立バレエ団ソリスト

「やるしかない。チャレンジングな年になります」

2024' Jun Vol.107

Dancers Web トップインタビュー

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― まず、年少の頃からお聞かせください。ヒップホップからバレエに移行されたそうですが、バレエのどんなところの惹かれたのでしょうか?

 

 それがまったく覚えてなくて(笑)。バレエをやりたいと言ったことも記憶にないんですが、私はとにかく、音楽がかかっていると、どこででも音に乗って踊っていたらしいんです。

 

― 本格的に好きになったのはいつ頃からですか?

 

 「好き」というよりも、できないことが多いという感覚です。悔しい感情の方が大きかった。ある日、私がバレエ教室をお休みしたときに、クラスのみんなはイタリアンフェッテを習ったらしいんですね。次に行ったとき、私ひとりだけ知らなくて、「なんで!」という悔しい気持ちでいっぱいで(笑)

 

― バレエダンサーを職業として意識したのはいつからですか?

 

 これも負けず嫌いの延長ですね。私はコンクールで1位になったことはないんですよ。プロになりたいと思ったきっかけも全然覚えていない(笑)。

YAGP (ユースアメリカグランプリ)など大きいコンクールに出るようになったとき、スカラシップをもらえたら海外に行けて、そのままプロの道に続くのかな、と思ったことは覚えています。

 

― バレエダンサーになっていなかったらどんな職業についていましたか?

 

 そのことについて、はじめてコロナ禍のときに考えてみたんです。でも…、答えが出なかったですね。

コロナの期間中はじめて踊れない状況が続いたときは、いったん引退した気分でした。

 

― プロになる前に憧れていたダンサーはいらっしゃいましたか?

 

 アリーナ・コジョカルさん、中村祥子さん、熊川哲也さんのDVDもよく見ていましたし、バリシニコフさんの「ドン・キホーテ」も大好きだし、挙げたらもうキリがないですね。

 

― 以前のインタビューで、「自分を信じるようになって、バレエのことばかり考えないようになりました」と語っていらっしゃいましたが、何かきっかけがあったのでしょうか?

 

 コロナです。自分のキャリアにおいて、それまで一時停止したこともなく、過去を振り返ることもなかった。改めていま振り返ると、結構たくさんの山を登ってきたなと思います。

上手くいかないことを何度も繰り返して、色々なことを乗り越えてきたからこそ、自分を信じられることができるようになったんだと思います。

 

 それまでは、毎日バレエしないと絶対ダメという強迫観念的な感覚だったのかなと。

でもコロナの期間を経て、これまで自分が培ったきたものはそんな簡単になくならない、ということにも気づいたんです。もちろん毎日レッスンを続けることは重要で、2日間オフするとすぐ分かりますが、以前のように自分を追い込むことはなくなりました。

 

― モチベーションはどんなところにありますか?

 

 今日は天気が良いとか、好きな音楽を聴くとか、自分が笑顔になれるものを見つける感覚でしょうか。

でも日々のバーレッスンで、今日はちょっと身体が重いなぁというときは、意図的にみんなの顔を見ながら、レッスンをします。私はどんなに疲れていても必ずエポールマンをつけるんですが、そうすると団員と目があって、相手は必ず笑顔を返してくれる。その笑顔を見ると元気になれるんですよね。

 

― 逆に、これまでダンサーを辞めたいと思ったことはありますか?

 

 あります。ノルウェーの気候もあまり合わなかったのかな。

精神的にも肉体的にもあまり良くなかったと思います。早い段階でどうにかしようと、まだ入団して間もなかったのですが、移籍を考えました。

 でもプリンシパルでオーディションを受けること自体が本当に難しかった。「君は素晴らしいけど、プリンシパルは難しい。自分が育ててきたダンサーを挙げたいから」と正直に話してくれた監督もいました。

 

― そして、2023年8月にベルリン国立バレエ団にソリストとして移籍されました。来シーズンからプリンシパルの昇格が決まっていますね。おめでとうござます!スウェーデンと比べてバレエ団の環境はどうでしょうか?

 

 レベルが高い!ポリーナ・セミオノワやヤーナ・サレンコなどのトップレベルのダンサーを毎日見ることができる。モチベーションが全然違います!彼らのドキュメンタリーを毎日見せてもらってるみたい。

ポリーナとは更衣室がいっしょで、中村祥子さんともいっしょに踊ってきたダンサーなので、この前祥子さんの話になって、「ショウコはすごかった!」と絶賛でした。

 

― 新監督クリスティアン・シュプックはどんな方ですか?

 

 ダンサー目線で私たちのことも良く考えてくれますし、リーダーシップもある。バレエ団のレパートリーも気に入っています。

 ノルウェーでオーディションを受けたい話をしたとき、まだノルウェー王立バレエ団に入団して間もなかったので、彼からは「ベルリンバレエ団では入団してもソリストの契約になってしまう。移籍したい理由を教えてほしい」と言われました。でも私は、プリンシパルのランクを落としてでも入りたいと思ったんです。

 

― それはなぜですか?

 

 ノルウェー王立バレエ団では、プリンシパルのランクはあっても他のランクがないんです。ノルウェーの国自体が平等主義ということもあると思うのですが、私にとってバレエは平等な世界ではない。これまで厳しいバレエ教育を受けてきたこともあって、「みんな平等」という環境があまり合わなかったのかもしれません。バレエをもっと極めたいという気持ちが強くなってきました。

 

― 実際、移籍されてどうですか?

 

 初日からすごい量のワークで、「ボヴァリー夫人」「眠れる森の美女」など、新作と古典の様々なリハーサルが同時に行われていました。さすがにハードで肩で息をしていたら、クリスティアンから「大丈夫?」と声をかけられて、「ちょっと疲れた」と答えたら、「これを望んでたんでしょ。(You asked for it.)」 と返されました(笑)。

 

― 日本でのゲスト出演も多いですが、「とても刺激になる」と語っていらっしゃいました。

 

 リハーサルの皆さんを観ているだけで、かなりの情報が視界に入ってきて、それが刺激です。調子が良くないときはこうやって調整するんだなとか、休息を取りながら整える人、本番前の過ごし方など人それぞれで、みんなのバレエに向かう姿勢を見るのが好きですね。

 

―  8月2日(金)、3(土)には、Ballet The New Classicの出演が決定しています。

コンテンポラリーの新作になるそうですが、どんな作品になりそうですか?

 

 振付は、ドルトムントバレエ団のときに作品を踊ったことのあるクレイグ・デビィッドソンさんです。

彼は今ベルリンに滞在していて、いっしょにクリエイトしています。ポアントを履きますし、ネオクラシックにも近いかもしれません。

 

―  作品の内容や音楽について、リクエストされたりしていますか?

 

 すべて彼に任せています。彼が持っているダンスランゲージをこなしているところですが、ポアントだとこっちの動きの方がいいとか、そういうリクエストはしていますね。

 日本で出演する舞台は古典作品が多く、ネオクラシック的な作品を踊る機会はないですが、どなたでもエンジョイできる作品になっています。音楽は秘密です(笑)!

 

―  第2部の『ショパン組曲 〜バレエ・ブラン〜』は、全キャストが出演されるそうですね。

 

 堀内將平さんの振付で新作になります。將平さんから映像を送ってもらって、直接電話で話をしたりして、作品観やイメージを共有しています。

 全体を通して、日本のお客さんはたぶん見たことがない、新しい世界観をお見せできると思います。

 

―  ベルリンバレエ団の来シーズンは、プリンシパルとしてのスタートになりますね。

 

 かなりチャレンジングになると思います。

2カ月前に全員集まってミーティングがあったときに、クリスティアン(新監督)が「僕は、監督に就任したときプリンシパルは慎重に選ぼうと思っていました。昇格させるには何年か必要と考えていて、2年間は昇格させないと決めていたましたが、今日上げることにしました」

 それで、私を含め3人のダンサーが昇格しました

 

―  昇格が告げられたときのお気持ちは?

 

 またプリンシパルに戻るんだな、やるしかない、という気持ちです。

団員は85人もいるし規模も大きいですし、お客さんの眼も肥えているのでプレッシャーもあります。正直言うと、ソリストで過ごせたシーズンは楽しかった。コール・ドもできるし、真ん中も踊れる。色々なポジションを満喫していました。

 スウェーデン王立バレエ団でプリンシパルに昇格したときも、「夢が叶った!」と嬉しかったけれど、次の日から少し気分が重いというか(笑)。色々な人からジャッジされている気分になるし、プリンシパルだから出来て当然、になる。

 でもこのような大きいドイツのバレエ団で、またプリンシパルという立場を任せていただけるということはとても光栄なことですし感謝しています。

 

―  ベルリンバレエのダンサーたちの反応は?

 

 「プリンシパルだったし、当然だよね」という声をもらって、みんなすごいいい人たち。入団してから『眠れる森の姫』のオーロラ姫でデビューさせてもらい、『ジゼル』で主演を踊ってきて、みんなのバックアップがあるので、これからもチャレンジしていきます。

〈Ballet The New Classic2024〉
2024年8月2日(金)、3(土)新国立劇場 中劇場
https://www.balletthenewclassic.com/

【佐々晴香プロフィール】

5歳より杏バレエスタジオにてバレエを始める。 ヒューストン・バレエ・スクールに留学し、2013年東京シティ・バレエ団入団。スタジオカンパニーを経て2016年にドイツのドルトムント・バレエ入団。2017年スウェーデン王立バレエにセカンド・ソリストとして入団し、2019年にプリンシパルに昇格。2023年8月にベルリン国立バレエ団に移籍、来シーズンからはプリンシパルへの昇格が決定している。
https://www.instagram.com/harukasassa/?locale=en_CA

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