
[2021年のフランス初演より]
KAAT神奈川芸術劇場では、2011年の開館から継続して、おとなもこどもも楽しめるキッズ・
プログラムを開催している。先鋭アーティストたちの新作や高いクオリティの海外の招聘作品
などを上演し、今回は、ダンサー・振付家の伊藤郁女の『さかさまの世界』が日本初演される
こととなった。本番まで約1週間に迫る中、快くインタビューに応じてくれた。

―2023年1月に、フランス東部のストラスブール・グランテスト国立演劇センター「TJP」のディレクター(総芸術監督)就任されました。どのような活動をされるのでしょうか?
アーティスティックなこと全般に渡って活動します。1年間で30作品の舞台がありますが現代マジックやサーカスなど、身体を使った演劇、もちろんダンス公演もあり、1年間に1回自分の作品も創るので忙しくなりますね(笑)。
その中でもユニークなのは、子どもたちを客員アーティストとして招いている点でしょうか。子どもの想像力やアイディアを「金 継ぎ」の役割として使いたいと考えています。
―そして今回、『さかさまの世界』振付・構成・演出をされますが、KAAT神奈川芸術劇場で日本初演することになった経緯を教えてください
芸術監督の長塚圭史さんが私の出演舞台をご覧になって、「身体性に衝撃を受けた」とご連絡いただきました。そこから、KAATで上演のお話をいただきました。長塚さんから、子どもと大人が楽しめる舞台は、色々な人に劇場に観に来てもらえるようになるのではといったお話なども伺い、2021年にフランスで初演した『さかさまの世界』に決定しました。
―子どもたちの「ひみつ話」から発想を得ているとのことですが、「ひみつ話」に興味をもったきっかけは何ですか?
まだ4,5歳の子どもは、言葉に対する理解が違うと思うんです。だからこそ、とてもクリエイティブで発想が鋭かったりする。
私はアーティストとして、彼らの世界観などを糧にしているので、子どもたちの感性を大事にしたいと思ったんです。
―「ひみつ話」を聞くために、自作の紙芝居をつくったそうですね。
一対一で話しを聞くと緊張して話せない子どももいますが、紙芝居を通して、今日はどんな夢を見た?その夢は重かったか軽かったか、どんな色だったか?など色々聞いてみます。
―どんな話をしてくれるんですか?
KAAT神奈川芸術劇場の近くに台湾や大陸系の幼稚園があるんですが、その中には、熊猫(パンダ)幼稚園という可愛い名前の幼稚園もあって、色々な子どもたちに話を聞きに行きました。
一番面白かったひみつは、「世界を救うのはカマキリだ」という子どもの話です。ちょうどそのとき、幼稚園でカマキリダンスを踊っていたらしいです(笑)。「ママが冷蔵庫の中に入ってしまった」という夢を見た子どももいました。
―日本上演にあたって、日本版の創作の難しさはありますか?
じつは、フランスより簡単に感じています。
日本には、舞楽・能楽で「序破急(じょはきゅう)」という音楽の構成を表す言葉があります。
「序」はゆっくり、「破」で拍子が加わり、「急」はクレッシェンドに盛り上がり、リズムが落ちる前に終わる。この日本人のリズムが、自分の血に入っているんでしょうね。楽しいです!
―本作の演出でユニークな点はありますか?
舞台監督や音響と照明のスタッフが、そのままの役で出てきます(笑)。
―それは面白そうですね!最後に本作の見どころをお願いします。
子ども心に帰れます。お客さんも参加しなくてはいけない場面や、ラップやボディペイティングも
あり、面白い構成になっていますよ。そのほかサプライズも用意していますのでお楽しみに!
KAATキッズ・プログラム2023『さかさまの世界』
2023年7月1日(土)~9日(日)KAAT 神奈川芸術劇場<大スタジオ>
※3 日~7 日休演
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