2020年の初演では小㞍健太 酒井はな 島地保武など、舞踊界のトップダンサーたちが集い、演出・振付の森山開次も蛇の役で出演。その魅惑的でしなやかな踊りに多くの観客を魅了し、ひびのこづえの斬新で鮮やかな衣裳も大きな話題となった。
初演に続き2023年1月の再演では、現代美術家の日比野克彦、音楽家の阿部海太郎の参加、そしてミュージシャンの坂本美雨と演奏家の出演・演奏も決定している。
「言葉の裏側の表現を見つけていくことが、ダンスの身体表現」
―2020年の初演で、「ダンスだからこそ『星の王子さま』の核心を突くことができる」と語っていらっしゃいましたが、手応えはどうでしたか?
ストーリーをただ単に、身体言語におきかえるだけというのはナンセンスという考えがありましたのでこの作品で、物語を忠実に追うだけでない表現ができたと自負しています。
サン=テグジュペリが郵便飛行士であった経歴や飛行体験にもとづいた中でこの物語は書かれたと思います。不時着した体験もしていますし、砂漠に落ちたときに水を求める中で、言葉に書き出せない思いもあったはずです。
でも身体表現だから表現できることもあるかもしれない。ダンスは、ダンサーが言葉を追わないからこそ見つけられるストーリーがあると信じています。
―再演では、元新体操選手の浅沼圭やふんどしダンサーの五十嵐結也など、個性的な新しいメンバーも揃いました。キャストを選ぶポイントはどんなところにありますか?
色々な舞台などで拝見していて活動を知っていた方も多いですが、偶然出会ったことの奇跡を大事にしたいという思いも強いですね。今回の演者の中には、以前、僕のクラスを受けていた人もいます。
ダンサーにとって大事なことは、自分自身の身体言語をもっているかどうかだと思います。テーマやヒントを手がかりに自ら動ける人と作品をつくりたいといつも考えています。
―“いちばんたいせつなことは、目に見えない”というサン=テグジュペリの言葉がありますが、ダンスでどのように表現する思いですか?
とはいえ、ダンスは視覚的なものなので、大切なものが見えるように私たちは踊っています。彼の名言はたくさんあると思いますが、名言に囚われないで踊っていきたい。物語の裏側の表現を見つけていくことがダンス身体表現であり、それがダンスの醍醐味だと思います。
―ダンサー・振付家・アーティストとして、「いちばんたいせつなこと」は何だと思われますか?
「星の王子さま」の物語の中でたとえて言えば、砂漠に落ちたとき、水は一番大事になりますよね。乾きを感じれば水が欲しいと思うし、僕はアーティストとして常に潤っていたい思いはある。でも潤っていたら踊らないかもしれないな(笑)。
大事なものを埋めるため、自分の中に乾きがあるから踊るのかもしれないですね。
―再演に向けての思いをお聞かせください。
まず、初演でやったことに自信をもって進めていきたい。新しいキャストも含め、
より作品を深めていくこと。そして、出演者たちとのコミュニケーションも大事にしたい。 アオイヤマダさんは前回初舞台だったので、それから2年経ち、どんな新しいアプローチをしてくるのかも楽しみです。
そして、色々な発想を変え、新しい発見に出合い物語を紡いでいきたい。
僕は蛇を踊りますが、その蛇の身体にどんな想いをつめこんでいるか、想像してもらえたら嬉しい。生き生きと踊るダンサーたちや、葛藤している姿も舞台で表現してゆきたい。
言葉の裏側の表現を見つけていくことが、ダンスの身体表現だと思います。
言葉には制限が多いと思いますが、ダンスはそれがない。色々な捉え方ができるし、
本にならなかった言葉も含めて、広がりがより豊かになれば、さらに良い形になってゆく
のではないかと期待しています。
KAAT DANCE SERIES『星の王子さま サン=テグジュペリからの手紙』
<全国ツアー>
【神奈川公演】2023年1月21日(土)~29日(日) KAAT神奈川芸術劇場〈ホール〉
【滋賀公演】2023年2月4日(土)、5日(日) 滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール中ホール
【広島公演】2023年2月8日(水) JMSアステールプラザ 大ホール熊本公演
【熊本公演】2023年2月12日(日) 熊本県立劇場 演劇ホール
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