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ロックバレエ2023「ROCK BALLET with QUEEN」リハーサル会見レポート



2021年7月、新宿文化センター。

「ROCK BALLET with QUEEN」の観客たちは、楽曲と一体化し、エネルギーを爆発させるダンサーたちにコロナ禍の憂鬱を忘れて熱い喝采を送った。それはトップバレエダンサーたちが、一回限りのプログラムのために集結した奇跡の夜―2年後の今年、なかのZERO大ホールでの再演が決まった。

3月、その公開リハーサルが都内のタジオで行われた。


今回、初演に引き続き出演するのは4人のダンサーたち。米沢唯(新国立バレエ団プリンシパル)、井澤駿(新国立劇場バレエ団プリンシパル)、菊地研(牧阿佐美バレヱプリンシパル)、長瀬直義(元東京バレエ団ソリスト)である。あらたに今井智也(谷桃子バレエ団プリンシパル)、二山治雄(元パリ・オペラ座契約団員)が加わり、今回のメンバーも豪華そのもの。


そして振付・演出は福田圭吾(新国立劇場バレエ団ファーストソリスト)。壺阪健登(ピアニスト・キーボーディスト/作・編曲家)は前回同様、バーのピアニスト役として登場。

この日お披露目されたのは「キラー・クイーン」と「ミリオネアワルツ」。


ピアノのあるバーで、思い思いに過ごす6人の男たち。壺阪のピアノに誘われるように立ち上がる米沢。やがて「キラー・クイーン」が流れだし、米沢がポワントでウォーキングを始めると、その全身からメロディと言葉がこぼれだす。


ポワントでのスライディングや、バーカウンター上からのリフトなど、男性ダンサーたちとのスリリングなパが小気味よく決まっていく。再演だけあって、さらに難易度の高いリフトや、絡みの距離の取り方などを確かめ合う取り組みが中心だ。



「研さんがリフトするタイミングで、唯ちゃんも背中を引き上げる感じ。きれい!」

「唯ちゃんが滑ってくる時の智也くんの椅子の位置を少し上手にずらすと、受け止めた瞬間の二人がのびのびしてカッコよく見えるかも」。福田の明快なコメントと、それをすぐさま形にできる踊り手の能力。初参加の今井も、たちまちダンスに溶け込んでいく。宝石を磨くようにシーンが完成していく。


続く「ミリオネアワルツ」は、壺阪のピアノ演奏で踊る明るくコミカルな味付けのパート。しかも、男性ダンサー各々がその個性とテクニックを披露する、ファンに嬉しい「お宝シーン」でもある。軽やかなピアノに合わせて、驚異的な伸びと柔らかさで二山が導入部を踊り始める。二山の役どころは女神に仕える天使。天使の指示で、男たちは各々ダンスで女神に自己アピールする。


「各ダンサーがこれまで踊ってきた様々な役柄のイメージで女神の唯ちゃんにアプローチします。たとえば智也くんは彼らしくノーブルな王子アルブレヒト。井澤くんはダンスール・ノーブルにロックテイストを加味して。長瀬くんは元々イケメンだからあえて封印(笑)、ナルシスト的にして強烈な印象を残したり。研くんは全体の流れを変えるワイルドさで。

治雄くんはついフィジカルのすごさに目が行きますが、醸し出す神聖さがハンパない。リハーサルが進むほどに、明確に天使を体現してくれている。三者三様の多彩な魅力を感じてもらえたら」(福田)。


この場面でも、さらなる挑戦が続く。

「研くんが片手逆立ちに入る前、椅子との位置関係どうしよう?」と、途中で相談タイムになった。結果、初演にはなかった『若者と死』ばりの動きを試すことに。

菊地は見事に一発で決めてしまう。誰もが難易度の高いことをさらりとやりながら、スタジオの空気はどこか和やか。これがトッププロの余裕だろうか。


リハーサル後は、質疑応答が行われた。

振付の福田は「再演は素直に嬉しい。2月に稽古が始まった時点では、内容変更は想定していませんでしたが、二山くんと今井くんが非常に魅力的なダンサーなので、個性をより生かせる振付に自然に変えた部分があります」


今井は「こういう曲で踊る機会はなかなかないですし、クラシックバレエ以外のことにも挑戦してみたいと思っていたので、楽しいし嬉しい。音楽と一体化して本番に臨みたいです」

二山は「誰もが口ずさめるQUEENの曲で踊るとどんな感じだろう、トップのバレエ団のそのまたトップの皆さんのなかに、未熟な僕が入っていいのかな、と恐縮な気持ちもありました。でも、めったにないこのメンバーで踊らせていただけて本当に嬉しい。圭吾さんの振付はセンスがあるし、楽しくリハーサルしています」


再出演のメンバーも思いを新たに臨む。

米沢は「『キラー・クイーン』の振付けはこれ以外考えられないですね。おこがましいですが、この曲は私のために振り付けられた、くらいの気持ちで踊っています」


長瀬は「QUEENの音楽はカウントとか取らなくても楽曲がリードしてくれる感覚があるのが不思議。曲のインパクトに負けないようにがんばりたい」


菊地は「音楽の魂をふと感じ取れる瞬間がある。意識して拾おうと思うと見失うから、無心に。舞台でQUEENの何かが自分に降りてきたら嬉しいですね」


壷阪健登は「初演のとき、唯さんの踊りを見ながら『手をとりあって』を演奏させていただいたときは、稽古場とは別の感動がありました。今回もがんばります!」


前回に引き続き公演を企画・主催するダンサーズサポート/DansersWebの石渡は「一度完成しているこのバレエですが、新曲の追加だけでなく『作品をもっと良くしたい』という福田さんの想いで、思い切った変更を加えたところもあります。誰もが前のめりに取り組んで下さっている姿に感激です」


最後に福田は「前回お客さんにとても喜んでもらえたので、評価していただいた感謝の気持ちを忘れずに。でも、それだけじゃなくもっと欲張って、チャレンジをしているところです。どうぞ期待してください」。福田とダンサーたちの思いと、パワーが結実する5月17日は、間違いなく忘れられない特別な夜になりそうだ。

(取材・文 加藤ゆかり)


ロックバレエ2023「ROCK BALLET with QUEEN」

2023年5月17日(水)なかのゼロ大ホール

【1階席チケット】発売中

【2階席チケット】発売中

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