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佐久間奈緒

Sakuma Nao

色々な作品を踊ってみたい

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​DancersWeb 
Vol.73  Aug 2021

バレエダンサー
(元バーミンガム・ロイヤル・バレエ団プリンシパル)

1995年にバーミンガム・ロイヤル・バレエ(BRB)に入団。同年芸術監督に就任した

デイヴィッド・ビントレーが選んだバレエダンサー、佐久間奈緒。

プリンシパルとして長きにわたり活躍したのち、2018年に23年在籍した同バレエ団を退団する。

そして、この夏横浜にて、BRBプリンシパル・厚地康雄との共演が実現する。

ー 9月18日の「Dance Dance Dance @ YOKOHAMA 2021」の公演で、厚地さんと出演されます。

久しぶりの日本での共演となりますが、この作品に決まった経緯を教えてください。

デイヴィットに、私達ふたりがガラ公演で踊れる作品は何かあるか相談してみたところ、

「私の作品の『スパルタクス』をやってみないか」と提案がありました。

『スパルタクス』はデイヴィッドが監督退任前に創作した作品ですが、全幕創作への

思い入れがあることも聞いていましたし、「ちょうどところどころ変えたいと

思っているところがあるから再振付したい」と言ってくださいました。

 

このコロナ禍の世界的状況の中、リハーサルをするのは2年ぶりだったのですが、

ぜひ「やりたい!」とお答えしました。

ー リハーサルの状況はどうでしたか?

スムーズにいくととてもオーガニックで綺麗なムーブメントですが、デイヴィッドの振付は

すべてにおいて、そこにたどり着くまでにお互いのタイミングを合わせるためのリハーサルを

重ねないと簡単にはできない振付なんです。

BRBのシーズンの終盤で康雄君が忙しい時期でもあるので、お互い時間を調整しながら

リハーサルをしています。随分スムーズにいくようにはなりましたがまだもう少し練習が

必要です。

ー 厚地さんはどんな美点を持ったダンサーだと思いますか?

康雄君は身長が高く、踊りにダイナミックさがあります。
私は失敗を恐れてときどき踊りが縮こまってしまいがちだと自分で気づくことがあるのですが、

彼の場合は私とはまったく違い、失敗を恐れることなくのびのびと踊ることができるんです。

そしてそのパッションと言いますか、エネルギーに溢れていて見ていて気持ちが良く

スッキリします。そしてデイビットも認めているとおり、表現力が豊かなところも

良い点だと思います。

ー 音楽についても教えてください

皆さんもよくご存知の、あの綺麗でドラマチックなアラム・ハチャトゥリアンの曲で踊ります。
ふたりが離れ離れになる前の最後の夜のシーンなので感情もこもりますし、
デイヴィッドが思い描くパ・ド・ドゥに少しでも近づけたらと思っています。


 

 

 

 

 

ー プロになる前のお話もお聞かせください。
幼い頃の憧れのバレエダンサーはいらっしゃいましたか?

私の小さい頃は今のようにYouTubeで色々な国のプロのダンサー達の
動画を観られる時代ではありませんでしたので、テレビで放送されるバレエを観たり、

福岡で公演があるときは母に連れて行ってもらったりしただけでした。


なので、そこまでたくさんのダンサーを知っていたわけではありませんが
森下洋子さんの公演や本などをいくつか拝見して努力をすることの大切さを
改めて教えられたことを覚えています。

その当時海外のダンサーはみんなシルヴィ・ギエムに憧れていて、私も「凄い!」と

憧れていました。

ー プロのダンサーになってからはいかがですか?

ダンサーになる前はテクニック重視だったのに比べて、プロになってからは
表現力や舞台での雰囲気だったり、役柄の理解力を重視するようになりました。
その作品ごとに素晴らしいなあと思ったダンサーを見ては、あんな風にできたら
良いなあと思っていました。

ー 「皆より練習すればどうにかなるかも…という思い」が常にあったとの
ことですが、その忍耐強さと精神力は、どのように培われたと思われますか?

バレエを始めたすぐの5歳ごろ、ピルエットができなかったので、
「今日はバレエを休む」と母親の仕事場に電話をしたところ「休んでもいいけど、

それくらいの気持ちだったら、もうやめなさい」という言葉が返ってきました。
「絶対にやめたくない!」と思い、ベッドルームの鏡の前で必死に練習してから

レッスンに行ったら、できるようになっていました。
そのとき、「練習すれば上手くなっていくんだ!」と自信がつき、
それからは苦手なことを集中して練習するようになりました。 

もう一つは、小さい頃から親やバレエの先生から「実るほどこうべを垂れる稲穂かな」

ということわざの意味を教えられたことも影響しているのかなと思います。
「どんなに昇格しても、上に行けば行くほど謙虚な気持ちで練習を積み重ねない

といけない」という格言が、私の胸の奥に深く刻み込まれていてます。


ー 観客として観た舞台でもっとも印象に残っている舞台は?

ロイヤル・バレエスクールに入ってわりとすぐに、ロイヤル・バレエ団の
マクミラン版の『ロミオとジュリエット』の公演を観る機会がありました。

生徒たちは無料の立ち見席で観れるんです。

それまで一回も観たことのなかった演目で、その日はヴィヴィアナ・デュランテが
主演で一気にファンになりました。ジュリエットもいつか踊ってみたいとときめいた
ことを覚えています。最も好きなバレエ作品の一つとなりました。

ー 吉田都さんから直接教わる機会があったそうですね。

2003年に吉田都さんが怪我で降板されたときに、アシュトンの「バレエの情景」を
代わりに出演させていただいたことがありましたが、その作品のリハーサルは
もちろんのこと、その後にバーミンガムでオーロラのコーチングもしていただき、
改めて踊りのクオリティの大切さを学びました。

それからは日頃のレッスンも、もっとターンアウトなどを意識しながらやるように
なりましたが、無理してターンアウトしようとしすぎてしまい、股関節などを
痛めてしまったので、ほどほどが良いことも痛感しました(笑)。

ー もっとも励みになった言葉などはありますか?

たくさんあります。『ジゼル』の1幕での狂乱シーンで相手のアルブレヒト役から
「涙が出た」と言われたことも嬉しかったですが、これまで数えきれないほどの
人達から嬉しい感想をいただき、いつも励まされてきました。
舞台で共演のダンサー達から「良かった」という言葉も支えになっていました。

ー BRBで2002年にプリンシパルに昇進したときの心境を教えてください。

イギリス国内のツアー先で告げられたのですが、私が楽屋にいたとき、
デイヴィッド監督がノックしたので出て行くと、ドアの先でボソッと
「プリンシパルに昇格させるよ、おめでとう」と言われました。
デイビットは、もともとは昇格を大々的に発表する監督ではなかったのですが、
そのとき周囲に誰もいなかったので、誰に喜びを現すこともなく「プリンシパルか〜」と

一人で受け止めたのを覚えています(笑)。

シーズンの途中の2月だったのですが、みんなどこからかそのニュースを聞いたようで
「おめでとう!」と自分のことのように喜んでくれました。
ただそのときは、すでに全部プリンシパルの役しか踊っていなかったので
あまり驚きはありませんでした。ただ、タイトルが変わったな〜くらいの感覚でした。

ー ビントレー監督の作品の取り組みはどういったものでしたか?

彼は自分の作品に対してはとてもこだわりがあって、音の取り方や間の取り方、
役柄や表現もこうやって欲しいという要求が強かったので、自分自身で役の解釈して

自分の味を出すというよりは、彼の要求に忠実に答えようとする気持ちでいました。

その中で表現の仕方など、たくさん学ぶことがありました。

ー ダンサーとして挫折感を味わったことはありますか?

公演の度に反省するところや悔しかったところは多かったのですが、
挫折感というのはあまり味わったことがないですね。
ただ、7、8年前に原因不明の足の裏の痛みが出るようになり、思うように
踊れなかったときは落ち込みました。
でも康雄君はじめ親友に支えられて立ち直れました。周りのサポートの
ありがたさをつくづく感じました。

ー 厚地康雄さんと多く共演されていますが、思い出深い作品は?

まずひとつは、私の出産後復帰した2015年のBRBの『白鳥の湖』です。
康雄君の王子デビューにもなった舞台ですが、デイビットがふたりで踊るのが
良いだろうと、初めて一緒にキャスティングされたので思い出深いです。
娘が生後4ヵ月のときにリハーサルがはじまり、公演中のときは幕間に授乳したり、
大変な部分もありました。


私と康雄君の母親が日本から娘のお世話をしに来てくれましたが、親が舞台を
観ている間は、バレエ団の友達に娘のお世話を頼んだこともありました。

その他にも、康雄君の『眠り』の王子、ロミオや『ラ・フィーユ・マルガルデ』
のコーラスなど、彼のデビュー公演の相手役としてキャスティングされ、
舞台上でデビュー姿を見届けながら、一緒に演じられたことはとても嬉しかったです。

そして思いがけず、2018年の日本凱旋公演でも東京で一緒に踊れたことは
忘れられない思い出になりました。


ー ダンサーとして今後の目標はありますか?

これから挑戦できる機会があるかどうかは分かりませんが、

絶対に踊ってみたいのは『マノン』です!
バーミンガム・ロイヤル・バレエ団のレパートリーにはなかったので
これまでチャンスはありませんでしたが、パ・ド・ドゥだけでも踊ってみたいですね。

そして、今回初めてネオクラシックの舞台に立ちますが、機会があれば色々な作品を

踊ってみたいです。

Dance Dance Dance @ YOKOHAMA 2021 
~舞踊の情熱~
2021年9月18日(土)神奈川県民ホール 大ホール
https://dance-yokohama.jp/ddd2021/icjd/

【佐久間奈緒プロフィール】
福岡県出身。3歳のころ母親に連れられて初めてバレエを観る。
5歳で三ノ上万由美にバレエを習い始め、10歳のときから古森美智子に学ぶ。
審査員の一人であった吉田都の目に留まり、1993年ロイヤルバレエ学校への

推薦入学を果たした。17歳で英国ロイヤル・バレエ学校に入学、1995年に

バーミンガム・ロイヤル・バレエ団(BRB)に入団、2002年よりプリンシパル。

『眠れる森の美女』『ラ・フィユ・マル・ガルデ』『コッペリア』などで主演し

そのテクニックと品のある演技で高く評価される。バランシンの『アポロ』、

アシュトンの『二羽の鳩』、ビントレーの『美女と野獣』2008年のBRB来日公演で 
『美女と野獣』 『コッペリア』 両演目の主役を務めた。

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